はじまり
福島県福島市生まれ。
子どもの頃から、
特別に言葉が好きだったわけでも、
文章を書くことが得意だったわけでもありません。
むしろ、
何をやっても長く続かない人間でした。
面白そうなものを見つけると夢中になり、
「これだ」と思って始めてみる。
でも、しばらくすると、
また別の何かに目が向いている。
本人には、
何かを「やめた」という感覚すら
あまりなかったのかもしれません。
ただ、そのとき夢中になったものへ向かい、
それまでやっていたことを
いったん置いてきただけ。
振り返れば、
そんなことをずっと繰り返してきました。

普通に生きようとしていた頃
仕事もそうでした。
周りのみんなと同じように働いて、
ちゃんと社会に馴染もうと、
自分なりに必死にやってきたつもりです。
「今度こそは」と思っても、
また続かない。
頑張ろうとするほど、
どうして自分には、
みんなが当たり前にできることが
できないんだろう。
そんなふうに、
自分を責めるようになりました。
「お前は、いったい何がしたいんだ?」
そう言われたことも、
一度や二度ではありません。
自分でも、
よくわかっていませんでした。
根気がない。
我慢が足りない。
何をやっても中途半端。
社会に馴染めない不適合者。
そんな自分を一番責めていたのは、
たぶん自分自身だったと思います。
人生には、いろんな時間がある
その間にも、
人生にはいろんな時間がありました。
家族と過ごした時間。
誰かと笑った時間。
何かに夢中になった時間。
今振り返ると、
「なぜ、あんなことをやっていたんだろう」
と思うようなことまであります。
でも、その頃の自分にとっては、
どれもそのとき歩いていた道でした。
2011年
2011年、東日本大震災。
福島で被災したことをきっかけに、
北海道へ移り住みました。
それまで当たり前だと思っていたものが、
当たり前ではなくなりました。
場所も。
暮らしも。
人とのつながりも。
人生の道そのものが、
大きく動いた出来事でした。
詞人くまさんの始まり
そして40歳を目前にして、
それまでの仕事を辞めました。
次に始めたのは、
路上で言葉を書くこと。
書道を習っていたわけでもありません。
字が上手だったわけでもありません。
むしろ子どもの頃は、
習字が大嫌いでした。
周りから見れば、
「また何か始めた」
だったと思います。
大反対もされたし、
鼻で笑われたりもしました。
それでも、
始めました。
それが、「詞人くまさん」の始まりでした。
目の前の人のために書く
路上に座って、
たくさんの人と出逢いました。
話を聞き、
その人を想い、
その人のためだけの言葉を書く。
ただ、
目の前にいる一人の人へ
言葉を届けていました。


たくさんの言葉を書き、
たくさんの出逢いが、
少しずつ自分の道になっていきました。
言葉が広がっていく
人との出逢いから、
少しずつ世界が広がっていきました。
路上で書いていた言葉は、
やがて本になりました。
言葉を歌にするようになりました。
人前に立つことも増えました。
映像をつくるようにもなりました。


ひとつのことを
ずっと続けてきたわけではありません。
そのときそのとき、
面白いと思ったものに夢中になり、
気づけば表現する方法が
少しずつ増えていました。
寄り道は、消えない
もちろん、
その間にも寄り道はたくさんしました。
途中でやめたこともあります。
失敗したことも、
たくさんあります。
でも今になって振り返ると、
続かなかったことも、
無駄ではなかった気がするのです。
そのとき覚えたことが、
何年も経ってから、
まったく別の場所で役に立つ。
昔置いてきたと思っていたものが、
ある日突然、
今やっていることにつながる。
あの頃はバラバラに見えていた道が、
少しずつ一本につながってきました。
出逢いと別れ
そして道を歩いていれば、
人とも出逢います。
様々な出逢いがあって、
様々な別れもある。
離れてしまう人もいる。
もう会えなくなる人もいる。
それでも、
その人と過ごした時間まで
消えてしまうわけではありません。
一緒に見た景色も。
交わした言葉も。
そのとき感じたことも。
どこかに残っている。
そしてまた、
めぐり逢う。
ここまでの道、これからの道
続かなかったからといって、
そこまで歩いた時間まで
なくなるわけではありません。
途中でやめた道にも、
そこで見た景色があります。
そこで覚えたことがあります。
そこで出逢った人がいます。
だから今は、
また別の道を歩いてもいいと思っています。
書くことも。
本をつくることも。
歌にすることも。
映像にすることも。
そしてこれから出逢う、
まだ名前も知らない何かも。
きっと、
どこかでつながっていく。
夢中で寄り道。
でもそれが、
一番の近道だったのかもしれません。
たぶんこれからも、
寄り道をします。
何かを始めて、
また違うものを見つけて、
そっちへ歩いていくこともあるでしょう。
そしていつか振り返ったとき、
「ああ、ここにつながっていたのか」
と笑えたら、
それでいい。
ここまでの道。
これからの道。
詞人くまさんは、
まだ寄り道の途中です。

